「大臣」と「事務次官」
例えば、国会で財務省を代表して国家予算などについて発言・答弁するのは、財務省の「大臣」です。
しかし、より実務的な話になると登場するのは「事務次官」です。
「事務次官」とは?
「次官」という肩書のせいで、「最も偉い人の次の人」、つまりナンバー2のポジションのような印象がありますが、「なぜ次官なの?」、「一番偉い人が出てくるべきだろう?」と疑問に思う人もいるでしょう。
しかし、それは誤解なのです。
各省庁において、キャリアと呼ばれる高級官僚の中で最高のポジション、いわば官僚機構の頂点にいるのが、「事務次官」なのです。
省庁での最高位は「国務大臣」ですが、それは各省庁の総責任者、いわば「顔」です。
その大臣から見れば確かに「次官」になりますが、その省を実際に機能させているのは「事務次官」なのです。
そういう意味では、いわば実務の主役ともいえます。
また、「大臣」は政治家である国会議員ですが、「事務次官」は政治家あるいは国会議員ではなく、その省庁という官僚組織のトップ、すなわち最高責任者なのです。
「事務次官」という呼び方は、官僚機構の最高責任者の呼称として、戦後になってから使われるようになったものです。
「事務次官」の人事
実務のトップである「事務次官」ですが、いろいろと問題もあります。
特に人事においては、「事務次官」をその下に位置する局長や審議官の中から選ばなければならないという制約があります。
いわば「順番で」決めるようなものなのです。
さらに、新しい「事務次官」が決まると同期の他のキャリア組は退官しなければなりません。
といっても、年齢的には50歳代後半なので、そのまま引退するはずもなく、天下りする者も多いのです。
つまり、政治と企業との癒着を生み出すもとにもなっているのです。
いろいろな問題はありますが、実際に現場で政治を動かしているともいえる「事務次官」ですので、「事務次官を目指したい」という人も多いです。
ある意味では、本当に自分の実力を発揮できる魅力的なポジションではあるのです。
各省庁幹部人事の決定者が変わった?
さて、最近各省庁の幹部人事に関して、新たな問題が生じています。
従来は、「事務次官」をトップとする各省庁の幹部人事についても、各省庁の独立性を考慮し各省庁内で決定され、内閣はそのまま追認するという形を取ってきました。
ところが、第二次安倍内閣発足後の平成26年(2014年)に、内閣官房に新たに「内閣人事局」が設置され、「事務次官」を含む各省庁の幹部人事はこの「内閣人事局」が決定することに変更されました。
このことによる内閣の各省庁に対する政治的介入が危惧されていましたが、この変更後は内閣にとって都合の良い各省庁の幹部人事が行われるようになってきているようです。
その結果、各省庁幹部は内閣の意向を重要視するようになり、「モリカケ疑惑」をはじめとする各省庁幹部による一連の公文書改ざん、隠蔽などの諸問題のいわゆる「忖度(そんたく)」疑惑がクローズアップされているのはご承知の通りです。
「忖度(そんたく)」という言葉はそれまであまり使われてはいませんでしたが、いまや「流行語大賞」にも選ばれ、すっかり一般にも浸透した言葉になりました。