日本人の足元から聞こえる音に対する感性とは?
波打ち際を素足で歩いたら、キュッキュッと砂の音がしますが、これを砂が鳴くといったりします。
いわゆる鳴き砂の海岸で、日本には150ヵ所から200ヵ所もあるといいます。
鳴き砂に限らず、もともと日本人は歩くときに足元から聞こえる音に、独特の感性を持っていたのかもしれません。
秋に落ち葉を踏み分ける音、冬にサクサクと霜柱を踏む音、そして新雪に足を踏み入れる音など、いずれもそれぞれの季節の風物詩といえるでしょう。
神社の参道に、小さな丸い石が敷き詰められているのはなぜ?
足元から聞こえてくる音といえば、神社の境内や参道を歩いていても、「シャリシャリ」と心地よい音がします。
敷き詰められた小さくて丸い石、すなわち「玉砂利」のためです。
この「玉砂利」、じつは外国人には歩きにくいと評判があまりよくはないようです。
歩きにくいのは日本人も同じかもしれませんが、それなのにどうして神社には「玉砂利」が敷き詰められているのでしょうか?
その理由は、「玉砂利」という名称、大きさや形、そして音にあります。
「玉砂利」の「玉」とは、「たましい(魂)」や「御霊(みたま)」のことです。
よく「玉のような赤ちゃん」とか「上玉」というように、「美しい」、「大切なもの」という意味もあります。
つまり、「玉砂利」とは、「御霊のこもった」、「美しく」、「大切な」石ということなのです。
もう一つ、「玉砂利」の上を歩くときのシャリシャリという音にも意味があります。
あの音を耳にすることで、参拝者の身や心が静かに落ち着き、清められるというのです。
ちなみに、日本では古くから、神聖な場所に小さな石を敷いて清めるという風習があったとされています。
そのため、「玉砂利」も神社を神聖な場として保つために敷かれているという説もあります。
さて、神社にお参りするときには、「玉砂利」を踏みしめ、その音を聞きながら参道を歩いて行きます。
そのときに参道の中央は「正中」といって、神様の通り道とされています。
したがって、真ん中を歩かずに、端を歩くのが神様への礼儀だといわれています。