「刑事裁判」と「民事裁判」
たとえば、一つの殺人時間が起こったとします。
この事件に関して、「刑事裁判」と「民事裁判」の両方の裁判が行われる場合があります。
「いったいどうして?」と思う人もいるでしょうが、これは決して不思議なことではありません。
それは「刑事裁判」と「民事裁判」とはまったく異なるものだからなのです。
「刑事裁判」ってなに?
「刑事裁判」とは、犯罪を犯した被疑者を発見して検挙し、その被疑者がその犯罪を犯したかどうか、犯した犯罪についてどのような刑罰を科すのが適当かを審理するものです。
ここで注意しなければならないのは、「刑事裁判」の場合、被疑者を訴えるのはあくまでも「国=検察官」であるということです。
したがって、被害者と被疑者とが争うのではなく、あくまでも検察官と被疑者との間での審理ということになります。
そして、「刑事裁判」で決定されるのは、その「犯罪の有無」、「懲役○○年」とか「罰金〇〇円」といった被疑者に対する社会的制裁の内容です。
つまり、その犯罪によって被害者が失ったものに対する補償などは一切審理されないのです。
「民事裁判」ってなに?
一方、「民事裁判」とは、個人と個人との紛争を法的に解決するためのものです。
金銭の貸し借り、土地の問題、相続問題、離婚、家庭内の揉め事など、人の暮らしの中で生じた争いごとに関しては「民事裁判」で審理されます。
そして、ここでは実際に不利益をこうむった者が、不利益を強いた者から何らかの補償を受けることが決められる場合もあります。
一つの殺人事件に関して「刑事」と「民事」、両方の裁判が開かれるということは、「刑事裁判」では「犯罪の有無」、殺人を犯した被疑者の罪について争われ、被疑者への刑罰が決められます。
そして次に「民事裁判」で、殺された被害者の遺族が、被害者が死んだことによってこうむる不利益を補償してもらうことに関して審理する、ということなのです。