日本の伝統芸能「能」と「狂言」
「能」や「狂言」は中世から続く日本の伝統芸能ですが、一般的に話している言葉がわからない、内容がよく理解できないなどといわれます。
たしかに両者とも独特の表現方法を用いて演じられるため、慣れていないと深く内容まで理解できないことが多いものです。
「能」や「狂言」の由来は?
「能」や「狂言」はもともと「猿楽」という平安時代に生まれた滑稽な物まねや言葉芸がルーツであり、鎌倉時代に入ってより演劇化して完成されたものです。
「能」と「狂言」の違いは、まずその表現方法にあります。
「能」や「狂言」の表現方法の違いは?
「能」の表現方法は文語体の「候調(そうろうちょう)」で台本通りに展開されますが、「狂言」の場合は「会話調」が主体で「~でござる」という表現方法が基本となっています。
この「~でござる」は、室町時代に庶民の間で普通に使われていた口語体の表現なのです。
「能」や「狂言」の演じられる内容の違いは?
演じられる内容も、「能」と「狂言」では違いがあります。
「能」は、「源氏物語」に出てくる人物や高名な武将など歴史上の重要な物語を題材にされたものが多く、どちらかというと悲劇的要素が強くなっています。
「狂言」の方は、逆に登場する人物は名もない男女や身近な庶民的な人物が多く、歴史上の人物などはほとんど出てきません。
内容の方もコミカルな要素が多く、見ていてより親密感が持てる演出となっています。
このように、「能」はどちらかというと芸術性を重視し、「狂言」はより娯楽性を重視した伝統芸能なのです。
なお、「能」にはほかにも「囃子方(はやしかた)」といって「能」の音楽を担当する人、「地謡(じうたい)」といって劇のあらすじを斉唱するものなどもいて、これら各パートがうまくコラボレートして演じられる総合伝統芸能なのです。