西洋の「白塗り」?
過激なロック系音楽のヘビーメタル分野で一世を風靡した「KISS」というバンドをご存知でしょうか?
顔を「白塗り」して、その上に異様な化粧を施したルックスは非常にインパクトのあるものでした。
この手の白と黒を基調にした化粧は「コープスペイント」と呼ばれ、悪魔などを想起させる演出です。
日本でも、テレビでよく見かける「デーモン閣下」も「白塗り」ですね。
日本には、はるか以前から「白塗り」があった?
「白塗り」の例
日本には、それよりもはるか以前から「白塗り」の派手な化粧がありました。
歌舞伎役者や芸妓、舞妓の化粧です。
歌舞伎役者は、顔を白く塗り、その上に役柄に応じた模様を描いていきます。
そして、顔の模様で、善玉か悪玉か、色男かどうかなどがわかるようになっています。
この化粧を「隈取(くまどり)」と呼びます。
始めたのは、初代市川團十郎だといわれています。
歌舞伎役者だけではなく、ご存知のように芸妓や舞妓も顔を白く塗っています。
それらはなぜなのでしょうか?
「白塗り」とした理由
その理由は、当時の照明と関係があるといわれています。
江戸時代には、もちろん電気はなかったため、明かりはろうそくだけでした。
しかし、ろうそくが発する光量は決して強くはありません。
そこで、暗い中でも顔がきれいに映え、白く見えるように、そして表情の陰影がしっかり伝わるように、「白塗り」をしたというのです。
今でも歌舞伎役者や芸妓、舞妓は、当時の「白塗り」の伝統を引き継いでいるわけです。
ちなみに、芸妓、舞妓は、日本でも京都独特の呼び方です。
芸妓は一般的には芸者と呼ばれ、舞妓は芸妓になるための最初のステップで、京都にしかありません。
なお、電気が作る明かりは一定ですが、ろうそくの明かりは常に揺らめいています。
そのことから、人の心を和ませる効果があるともされています。
揺らめく明かりの中でリラックスしながら、「白塗り」の芸妓と宴を楽しむのはなかなか乙なことだったでしょう。