今回は、「食パン」にまつわるお話です。
目次
「食パン」に「食」の字が付くのはなぜ?
どこの家庭でもよく見かけられるのが、「食パン」です。 生活の必需品といってもいいくらい生活に溶け込んでいます。
ところで、すべての「パン」が食べるためにあるわけですが、なぜ「食パン」にだけ、わざわざ「食」の字がくっつくのだろうかと疑問を持ったことはありませんか?
じつは「食パン」という呼び名が、いつ、どのような経緯で誕生したかについて、詳しいことはわかっていません。
しかし、いくつかの説があげられていますので、それらを紹介しましょう。
「主食パン」説
「主食用」の食べ物だと強調するためだというものです。
戦前の日本では、「主食」の米に対し、サツマイモやジャガイモなどを「代用食」と呼んで区別していました。
やがて、パンが広く出回るようになると、パンは「「代用食」ではなく主食として食べるもの」という意味で「主食パン」と呼ばれました。
これが略されて、最終的に「食パン」に落ち着いたのだという説です。
「本食パン」説
戦前のパン職人は「食パン」のことを、西洋料理の「もと」となる食べ物という意味で「本食パン」と呼んでいました。
その「本食パン」を略して「食パン」と呼ばれるようになったという説です。
対「菓子パン」説
「菓子パン」と区別するために「食」の字が付いたというものです。
「アンパン」や「クリームパン」などの中身のある「パン」は、一括して「菓子パン」と呼ばれていました。
一方の「食パン」は、「お菓子としてではなく、食事として食べるパン」という意味で「食パン」と呼ばれるようになったという説です。
その他の説
なかには、まともな説とは思えないようなものもあります。たとえば、
- パンを作るには酵母を使いますが、焼き上がったパンの中は、いくつもの小さな穴が開いたような状態になっています。この穴が「酵母に食べられた」ためにできたので「食」べられたパンとして「食パン」になったという説
- デッサンの際に消しゴムの代わりに「パン」が使われており、これは「消しパン」と呼ばれていました。一方の「食パン」は、これは食べるためのパンであるとして「食パン」となったという説
- 同じ台所にあるフライパンなどのパンと混合しないように「食パン」となったという説
さて、「食パン」に「食」がついている由来についてみてきましたが、次は「食パン」の数え方についてみていきましょう。
「食パン」を数えるときに、通常は「1斤」、「2斤」のように数えますが、この「1斤」とは何でしょうか?
「食パン」の「1斤(きん)」とは?
重さの単位「斤」とは?
「斤」とは、もともと今は使われていない長さや重さの単位を定めた尺貫法による重さの単位です。
1斤=16両=160匁とされ、今の単位では600グラムです。
しかし、現代では「斤」という単位は「食パン」にしか使われていません。
ところが、「食パン」に使われている「1斤」は600グラムではありません。なぜでしょうか?
「食パン」の「1斤」とは?
尺貫法の時代、舶来品に対しては、1ポンド(453.6グラム)に値が近い120匁(450グラム)を「1斤」とし、これを「英斤(えいきん)」と呼んでいました。
もともと舶来品であった「食パン」はこの「英斤」を単位として売買されていました。
すなわち、当時は「食パン」1斤は450グラムだったのです。
しかし、「1斤」として売られたパンの重さは時代とともに少なくなっていきました。
現在では、製パン業界の公正競争規約にて、「食パンの1斤=340グラム(以上)」と定めていますが、製パン業界では便宜上、重量は340グラムから500グラム程度で、大きさは約12.5cm四方のものを「1斤」の基準としています。
ということは、同じ「食パン」1斤でも重さにばらつきがあるということですね。
ちなみに、6枚切りや8枚切りと呼ばれる厚さについては、「1斤」(12.5cm四方)を6等分したものを6枚切りというように製パン業界で統一されています。