身分証明はなにでする?
外国映画を観ていると、警察官が一般市民に「身分を証明するものは?」と、何らかの身分証明書の提示を求める場面がよくあります。
ところが、同じ身分証明に関することでも「戸籍」が話題になることはまずありません。
「結婚して、夫の籍に入る」とか「あなたの本籍はどこ?」などと会話をしている外国人などは見たことがありません。
なぜでしょうか?
その答えは簡単です。
外国にはほとんどの場合、「戸籍制度」がないからです。
「戸籍制度」が日本にあるのはなぜ?
日本人にとってはごく当たり前の「戸籍制度」ですが、世界中を見ても「戸籍制度」は、じつは日本、韓国、台湾などにしかないのです。
こうしてみると、「戸籍制度」があるのは、かつて日本が統治していた国といえるかもしれません。
日本で「戸籍」という考え方が採用されたのは、大化の改新(645年)以降の律令制の時代でした。
ところが貴族社会になると、農村における実力者のみを政府が把握する制度に変わったために「戸籍制度」はなくなり、それが長い間続きました。
再び「戸籍制度」が復活したのは明治以降です。
その根底にあるのは、筆頭者を中心にした「戸」の中に誰が住んでいるかを把握することによって国家の統制をとる、という考え方です。
いわば、「戸」にどんな人間が所属しているかを確認するのが「戸籍制度」なのです。
これは、あくまでも個人登録を基本とする欧米諸国の身分登録制度とは根本的に考え方が異なります。
世界的に見れば、かなり独特な制度だといえます。
とはいえ、日本でも個人主義的な身分登録制度を考えるべきではないかという議論もあります。
また、近年は夫婦別姓問題や個人のプライバシーの保護問題など、新たな問題とからめて「戸籍制度」が語られることも増えてきました。