「かいせき料理」は二種類ある?
高級な日本料理の代表のようなイメージがある「かいせき料理」には、「懐石」と書くものと「会席」と書くもののニ種類があります。
これらは同じなのか、それとも違うのかと疑問を持っている方も多いと思います。
「懐石料理」と「会席料理」は発音が同じなので混同されがちですが、実はまったく別のものです。
簡単にいえば、「懐石料理」は茶を楽しむための料理であり、「会席料理」は酒を楽しむための料理です。
すなわち、料理の成り立ち(由来)と目的が元々異なります。
以下に各々の料理の内容を少しばかり詳しく見ていきましょう。
「懐石料理」とは?
「懐石料理」とは、本来は茶道において茶会の際に、会の主催者である亭主が来客をもてなす料理のことをいいます。
これは茶の魅力を充分に堪能できるように、茶の前に空腹を癒すために適度の料理をふるまうというものです。
「懐石」という言葉自体は、修行中の禅僧が寒さや空腹をしのぐ目的で温石(おんじゃく)を懐中に入れていたことから、お腹を温める程度の軽い料理と意味合いで使われはじめたといわれています。
正式な茶会における「懐石料理」のマナーは、茶道の各流派によって細かく決められています。
しかし、正式な茶会以外の場、例えば料亭や割烹などをはじめとする日本食を扱う様々な料理店で「懐石料理」を提供するところも多いのもご承知の通りです。
これらの料理店で出される「懐石料理」は、食事として気軽に楽しめるようにアレンジされたものなので、もちろん茶道の心得がなくても大丈夫で、食事として楽しめば良いのです。
尚、茶事における「懐石」のことを特に「茶懐石」と表わして区別することもあります。
では、一方の「会席料理」についても見てみましょう。
「会席料理」とは?
「会席」とはもともと連歌や俳諧の席のことで、このような席で出された料理が「会席料理」の起源です。
江戸時代にこのような会席が料理茶屋で行われるようになりました。
このような会席は当然ながら酒席の一面もあったことから、酒席向きの料理が工夫されるようになり、「会席料理」として定着したものです。
また、「会席料理」は、武士や貴族が宴会でお客をもてなすために出した本膳料理の影響も受けているともいわれています。
現代では、料亭、ホテル、結婚披露宴などで出されるいわゆる和食フルコースのほとんどは「会席料理」といってもいいでしょう。
当然ながら、「懐石料理」のような細かい作法はありませんので、気軽に楽しめます。
「懐石料理」と「会席料理」の献立内容
参考として、「懐石料理」と「会席料理」の一般的な献立内容を以下に記載しておきます。
耳慣れない言葉も多くあるかと思いますが、知識として頭の片隅に入れておけば、それぞれの料理をより楽しめるかと思います。
「懐石料理」
基本は一汁三菜(三菜は向付、椀盛、焼物)、これに強肴、小吸物、八寸、そして湯桶、香物で締めくくりとなります。
- 飯
- 汁 ・・・ 味噌汁
- 向付(むこうづけ)・・・ 刺身、酢の物など
- 椀盛 ・・・ 煮物
- 焼物
- 強肴(しいざかな)・・・ 塩辛など
- 小吸物
- 八寸(はっすん)・・・ 山海の珍味
- 湯桶(ゆとう)・・・ お焦げの湯漬け
- 香の物 ・・・ 漬物
もちろん、茶会や料理店によって献立は多少異なります。
「会席料理」
基本は一汁三菜(山菜は刺身・焼き物・煮物)、さらにお通し・揚げ物・蒸し物・酢の物などの酒肴が加えられ、最後に飯・味噌汁・香の物、水菓子となります。
- 先付(さきづけ)・・・ お通し
- 前菜
- 椀物(わんもの)・・・ 吸い物
- 向付(むこうづけ)・・・ 刺身
- 焼き物
- 煮物
- 揚げ物
- 強肴(しいざかな)・・・ 酢の物
- 蒸し物 ・・・ 茶碗蒸しなど
- 食事 ・・・ ご飯、止め椀(味噌汁)、香の物(漬物)
- 水菓子 ・・・ 果物
もちろん、料理店、予算によっては献立は異なります。
最後に一言
以上で「懐石料理」と「会席料理」の違いを理解頂けたと思います。
あとはそれぞれの料理を十分にお楽しみ下さい。