「定礎」の文字を見かけませんか?
ビルやマンションの玄関横を通ると何気なく目に入ってくるのが「定礎」の文字が刻まれた石やプレートです。
単に竣工日を記念に記しただけのものと思われがちですが、じつはそれだけではないのです。
そもそも「定礎」、「定礎式」とは?
そもそも「定礎」とは、石造建築の本家であるヨーロッパで、建物の基準となる隅の礎石を定めることをいいました。
その際に開かれる儀式を「Corner Stone Laying Ceremony (定礎式)」というのですが、本来は建設のごく初期段階で行われるものです。
日本における「定礎」、「定礎式」とは?
しかし日本では、建築工事がある程度まで終了した時点で、それまでの工事の安全に対する感謝と、後の仕上げの工事の安全を祈るためにこの「定礎式」が行われています。
そして、その際に「定礎石」が取り付けられるのです。
場所としては、通常建物の南東の角に置かれますが、最近では正面玄関近くに設置されるケースも多いです。
「定礎石」の下にはなにがある?
ところで、あの石やプレートの下に箱が埋め込まれていることをご存知でしょうか?
この箱は「定礎箱」といい、「定礎式」の時に土中に収納されるものです。
「定礎箱」そのものは、永年の腐食に耐えられるように鉛や銅、ステンレス製で作られています。
箱の中には住所や発注者、施工者などを記した「定礎銘板」のほか、氏神様のお札、建築平面図、当日の新聞、通貨、社史、社員名簿などが収められています。
普段はもちろん取り出すことはできませんが、再び見ることができるのは建物を壊すときです。
このように、「定礎」とは未来や過去に思いを馳せることのできるタイムカプセルのような存在でもあるのです。
普段何気なく目にしている「定礎」にも深い意味があるのですね。