「表札」のあれこれ
ひと昔まで「表札」といえば、かまぼこ板より少し大きいくらいの縦長の木や石に筆書体で名前を掲げるのが普通でした。
しかし、近頃の住宅では、しゃれたステンレスのボードに英字で家族全員の名をいれたり、透き通るガラスに漢字と英字を併記したりするなど、じつにバラエティに富んでいます。
もっとも、防犯上の理由から「表札」を掲げない住宅もたまに見かけますが。
しかし、「表札」を出す位置だけは門柱や玄関の「右側」と昔から決まっており、今も変わりがありません。
なぜなら、これにはれっきとした意味があるからなのです。
「表札」が必ず門や玄関の「右側」にかけられているのはなぜ?
日本には古くから中国の「陰陽五行説」が根付いています。
それによれば、万物はすべて相反する2種の「気」から成り立っており、それらは「陽」と「陰」に分けられます。
上と下、左と右、日と月、紅と白、喜と怒・・・のように。
すべて前者が「陽」で後者が「陰」です。
つまり、門柱あるいは玄関を家側から見ると、「表札」がかけられているのは「左側」で、左が「陽」、つまり「上座」にあたるのです。
逆に家の外側から見ると、「表札」がかけられているのは「右側」で、右が「陽」、つまり「上座」にあたるわけです。
従って、「表札」の位置は「陽」の位置、すなわち家の外側から見て「右側」となっているわけです。
アパートやマンションなどの集合住宅ではどうなの?
最近ではアパートやマンションなどの集合住宅も増えていますし、門柱などもない住宅も多いです。
しかし、集合住宅や門柱のない住宅でも「表札」がかけられるのは外側から見てドアの「右側」、家側から見れば「左側」、すなわち「陽」の位置にあります。
「陰陽五行説」は風水の元にもなったもので、特に住居や街の計画などにおいて、長い間重要な役割を担ってきたのです。
今後、どんなに日本の住宅事情が変化しようとも、こうした古(いにしえ)の思想は案外根強く守られていくものなのかもしれません。