これまで書いてきたように、輸出向けプラントの設計部門に配属された私にとっては、専門の技術力習得以外に当然ながら英語力の習得が必須でした。

まず必要となったことは、英語を「読む能力(リーディング力)」でした。

こちらは日々渡される英語の技術書類を読んでいくうちに、専門用語をしだいに覚えたこともあり、徐々にですが何とかこなせるようになってきました。

次に必要となったのは、英語を「書く能力(ライティング力)」でした。

こちらについては、第10回「ライティング」教材の学習方法 にて書いたように、松本亨著「書く英語」というシリーズ本を自分の自由時間を活用して学習し、こちらもしだいに何とかこなせるようになってきました。

これら英語を「読む能力(リーディング力)」と「書く能力(ライティング力)」の二つについては、学校英語という基礎力があったので、それを元に学校英語習得と同じような方法で学習してきたわけです。

しかし、英語に関する他の能力、すなわち英語を「聞く能力(リスニング力)」と「話す能力(スピーキング力)が私には全く欠けているままでした。

私は入社するまで読み・書き主体の学校英語しか知らなかったのですから当然といえば当然です。

そんな状況下、輸出向けプラントの設計部門に配属されたとはいえ、新入社員時代には外国人と直接話すことなんてないだろうと思っていました。

従って、英語を「聞く能力(リスニング力)」と「話す能力(スピーキング力)、すなわち英会話力については当分の間必要でないだろうととたかをくくっていました。

そのうち必要となるときが来たら、そのとき勉強を始めればいいと気楽に考えていたわけです。

しかし、それは単なる希望的観測であり、勝手な思い込みでしかなかったのです。

なんと英会話力が必要となる日が突然やって来たのです。

スポンサーリンク

ある日突然英会話力が必要となった!

私が入った会社は米国の企業から主要プラントの技術供与を受けていました。

この関係で、米国の技術提携元の会社から年に数回定期的に技術者などが来社していました。
また、海外の顧客筋からの訪問者も結構ありました。

私が配属されていたのは東京の本社でしたが、これら海外からの訪問者はまず本社に来て、次に地方にある工場に行き、そして再度本社に来てその後帰国するというパターンが一般的でした。

そのような時には通常は本社の部課長や課長代理レベルの人間が工場へ同行するのですが、彼らが他の件で忙しくて都合がつかない時にはその同行の役目が若手にも回ってくるのです。

とはいっても、実際にはこの役目が新入社員に回ってくることはそれまではなかったと思います。

しかし、上司が皆忙しかったのでしょう、ある日突然そんな役目が新入社員の私に回ってきました。

米国から来た3人の技術者を明日地方にある工場まで連れて行けとの部長命令でした。

工場ではすべて工場の人間が面倒を見るから、行き帰りだけおまえが面倒をみろというものでした。

それまで外国人とは一度も話もしたことのない私にとってはまさにパニックといってもいいものでした。

まさに英会話パニック!

地方にある工場へは通常飛行機で行くのですが、彼らの希望はなんと新幹線で行きたいというものでした。

当時日本の新幹線は世界的にも珍しいものだったので、彼らも非常な興味を示したのです。

飛行機だったら、彼らと一緒にいる時間も短く、その分彼らと話す時間も少なくていいと思っていた私にとってはまたしても誤算でした。

新幹線は当然ながらグリーン車だったのですが、米国人3人と私でちょうど4人が向かい合わせに座ります。

日本人だと新幹線に乗ってもしばらくすると寝てしまうのですが、彼らはそうではありませんでした。

どうか内輪で話し私には話しかけないでくれと内心では思っていましたが、相手はこちらの気持ちなど察するわけはなく、3人が交互に話しかけてきました。

私の頭の中は真っ白のパニック状態で何を答えたのかも覚えていませんでした。

きっと頭の中の少ない知識を総動員し一生懸命英作文をしながら、しどろもどろの英語らしきもので応答していたのでしょう。

工場に着くまでの時間が実際の何倍、何十倍にも感じられた一日でした。

スポンサーリンク

さて今後どうするか?

二度あることは三度あるではないですが、このような機会は増えてくるだろうと容易に想像ができました。

これに対しどう対処するかという新たな苦難の道が立ちふさがった来たわけです。

以前の英語を読めない(リーディング力欠如)、書けない(ライティング力欠如)という問題点の解決には不十分ながらもそれまで学んできた学校英語に糸口がありました。

すなわち、学校英語の英文解釈や英作文というものからの延長線上で対処すれば良かったのです。

ところが、英語を聞けない(リスニング力欠如)と英語を話せない(スピーキング力)という問題点の解決には、学校英語になんの糸口も見いだせませんでした。

私が中学や高校で習った学校英語にはリスニングやスピーキングは全く含まれていなかったからです。
(今は少しは改善されているかもしれませんが)

新たに立ちふさがった英語のリスニング力、スピーキング力欠如、すなわち英会話力欠如という大問題にどのように対処して行くかが新たな大きな課題となったわけです。

では、第12回目はこの辺で。

次回をお楽しみにして頂ければ幸いです。

スポンサーリンク